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苗作りの仕事をやめてからもうだいぶ経ちますが、時々農業関係の知り合いに、野菜の苗を作ってもらえないかといまだに頼まれます。
しかし、家から車で数十分かかるような現場での育苗は出来ないのです。
こまめにみてあげられる環境でないと作れません。
ですので、家の小さな庭で作るのでもかまわないという条件でのみ、作っていました。
レタスなどの葉ものなら1500本くらいまでならまかなえますし、果菜類も途中までの育苗ならぎりぎり100本くらいまでなんとかなります。
一度に数千本数万本作る現場にいた私には、なんてことない数字です(笑)
ある時、スイカの苗を作ってもらえないかと打診がありました。
普通スイカは接木(つぎき)をするのですが、接木の必要ない品種だということで、させていただくことにしました。
それに、私も久しぶりにスイカを育てられることが嬉しかったもので(笑)
育苗現場には10年ちょっとおりましたが、師匠に「おまえは瓜科に向いてるな」と言われ、後半は瓜科を専門に、特に小玉スイカを作っていました。
…なんだか懐かしいです。
さて、スイカの種のまき時は通常2月頃なのですが、発芽温度は27~30度です。
寒い中、真夏の温度を保持して芽を出してもらわないといけません。
農業設備が何一つない中でどうしたものかと考えて…試行錯誤の結果、こたつに入れて発芽させるという結論に!(笑)
土が乾かないようにビニールで覆い、ちょうど使っていないこたつがあったのでそれを引っ張り出して、すいかの種を温めました。
33度くらいまでならなんとかなりますが、それ以上高温にすると危険です。
こたつをつけっ放しにしておくと、きっと種は高温になるでしょう。
ですので、夜はバスタオルでぐるぐる巻きにしてこたつは消し、昼にみてあげられる時に様子をみて温めることにしました。
しかし、育苗に不可欠な地温計がありません。
昔を思い出しながら、手の平で温度を計りました。
そういえば昔、温度ばかりを気にしていて、師匠に「おまえは温度計を育ててるのか?苗を育ててるのか?」などと怒られたりしたものです(笑)あぁー懐かしいなぁ。
すいかたちはこたつで温まり、2日後、元気に根を出してきました。
ビニールで覆いながら少しずつ外気に慣らし、土中緑化方式にしたので根が乾かないようひたすら霧吹きをかけました。
結果、発芽率は驚異の9割4分でした…8割出ればいいと思っていたのですが。
おそるべしこたつパワーです(笑)
発芽して落ち着くまでという約束でしたので、本葉が開きかけた頃、先方に引き渡しました。
スイカの葉が開く音と独特の匂いが懐かしく、楽しかったです。
去年は体調が悪かったのですべてお断りさせていただきましたが、やっぱり楽しいので、また機会があればお受けしようかな~(笑)
(写真はその時のすいか苗、「天竜3号」です)
寒い日もありますが、だんだんと春が近づく気配がしますね。
写真は、去年の春のパンジーです。
おととしの夏に、種をまいて育てました。
去年の夏は体調が悪くて花の種まきが出来なかったので、今年の春の庭は、さぞかし地味になることでしょう(笑)
パンジーの種をまくのは、9月頃が一番育てやすいのです。
その時期から種まきが遅れすぎると、しっかり育ちません。
9月頃にまけば、咲き始めが2月3月になります。
花の少ない12月末あたりから咲いてもらいたい時は、8月にまきます。
ところが、パンジーの種の発芽する条件は20度前後です。
極端な高温にあうと、種が死んでしまいます。
真夏に20度前後を保つのは至難の技です。
どうやって8月のパンジーに芽を出してもらったかというと…タッパーに濡らしたティッシュを敷いて種をまき、乾かないように軽くラップをして穴を開け、それを冷蔵庫の野菜室に入れてました!(笑)
しかし、野菜室に入れっぱなしだと温度が低すぎて発芽に時間がかかるし、乾きやすいです。
時折出して、乾いていないか確認し、種の音をきいて様子をみて、温度が上がってきたらまたしまうというのを2~3日やっていると、うまい具合に発芽してくれるわけです♪
発芽というけど、まず出てくるのは、根です。
根が出て、双葉が種の殻から抜け出す前に、土に下ろしてやります。
植物はみんな強いので、発根さえしてしまえば、だいたいは何とか育つものです(笑)
土に下ろした後はがらりと環境が変わるので、ちょっと気にかけてあげます。
そこさえクリアすれば、あとはすくすく育って、早春から私たちを楽しませてくれます。
昔育苗現場で働いていて、引退した後も命のエネルギーが欲しくて種ばかりまいていた私は、こういう記事をさっくりと書いてしまうような、極端な種まきオタクなのです(笑)
どうやったら種が芽を出してくれるか考えるのが好きなのです(笑)
それで、開いた双葉の音をきくのが好きなのです。
あれやこれやと発芽に試行錯誤した末の植物が、長い時間をかけて育ち、やがて花を咲かせる瞬間は、ちょっと感慨深かったりもするんですよ(笑)
植物が生長する時に耳に聞こえない音を感じるのですが、他にも植物から感じることがあります。
目には見えない顔色があるように思うのです。
またへんてこなことを言っていますけど(笑)
野に生えている草、鉢植えで育てている花、それぞれの植物の違いはあっても、顔色を感じます。
例えば、日照り続きで大地が乾いている時の草の顔色と、水をずっとやっていない鉢植えの花の顔色は似ています。
見た目でしおれていれば、「水が足りないのだな」とわかります。
ですが、しおれ始める前からすでに、「身体の中に水が少ない」という顔色をしているんです。
土の中の肥料分が足りなくなってくると、大方の植物は葉の色が黄変します。
この、黄変し始める3日前くらいからもう、「肥料分が足りない」という顔色をしていたりするんです。
元気そうな子どもを見ても、なんとなく、この子熱があるんじゃないかなと感じたりする感覚と似ています。
私が植物についての顔色や音を感じたりするのは、若い頃に野菜苗の生産現場にいたというのもあるかも知れません。
昔、師匠に言われました。
「苗に異常があるなら、苗のあるビニールハウスの前に立った時点、中に入る前から異常を察知するようでなければならない」
当時はそんなこと出来ないよと思っていましたが、これがいつの間にか分かるようになっていました。
ビニールハウスの中は小さな苗がひしめきあうので、いつもわやわやわやわや耳に聞こえない音がして大変に騒がしいけど、異常がある時は、明らかに植物の育つ音が小さいんです。
ビニールハウスのまわりの空気が違うんです。
あの「生きるぞ~」のエネルギーが薄いんです。
「あっヤバイ!」という感じです(苦笑)
植物の音と顔色を感じて、それに見合った環境を用意すれば、植物は素直に生長します。
環境を用意できない時は、枯れます。分かりやすいのです。
ウチの植物は、あまり世話をしていないけれど、なんだかみんな元気です。
たぶん、日々見えない顔色と聞こえない音を感じて、ちょっとやそっとの環境の変化ではびくともしないように、植物を鍛えてるからかも知れません(笑)
(写真はスイートアリッサムの花です)
私は植物が好きです。
とりわけ、草花や野菜などの一年草の双子葉植物が好きです。
種から芽が出て、双葉が開くところが好きなんです。
細胞のうごめく音がするから。
その音は、春に広葉樹が芽吹く時や、5月頃の観葉植物などからも感じますが、一番分かりやすいのが、この瞬間なんです。
土の中から茎がみえてきて。
やがて閉じた双葉が現れて。
その双葉が開く時から、開ききって本葉の先がちょっぴり見える時までの間。
そのわずかな期間に、大きく、植物の中の細胞がうごめく音がするんです。
「よ~しこれから生きていくぞ~!」っていうエネルギーが満ち溢れてるように思うんです。
よく晴れた日の朝の光が、生まれたてのぴかぴかの双葉に当たる時、細胞はよりいっそううごめくように感じます。
もの凄く忙しく動いています。
この音が好きなんです。
もちろん、耳には聞こえません。
でも、音がするんです。
へんてこですね(笑)
何言ってるんでしょうね(大笑)
でも、これが好きなんです。
この瞬間を味わいたいがために、どんどんどんどん種をまいて、小さな庭が植物であふれかえってしまうのです…。
(写真はサニーレタスの芽です)